あたしは日南君と井上君に挟み込まれる形で帰ることになった。

日南君はやっぱりそっぽを向いて機嫌が悪そうで、
井上君はずっと喋り続けている。

「でね、こけてカツラがとれたんだよ~!」

「そうなんだ!」

「…ねぇ、涼介」

「んぁ?」

突然井上君が日南君に聞いた。


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「なんでそんなに機嫌悪いの?」

ド直球。もう少し遠回りな言い方はできなかったの…。

「知るか」


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「あ、分かった! オレばっかり北条さんと喋ってるからでしょ!」

そんなわけないじゃない。そうあきれて日南君の方を見ると。


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「…真っ赤…」

「るせぇ! こっち見んなっ!」

真っ赤だった。

目の周りもほっぺたも見るからに赤くて、
見てるこっちも赤くなりそうだった。

「図星なんだ~! 涼介かわいい♪」

「バカ」


そんな日南君を見て、あたしはくすくすと笑ってしまった。

「二人見てると楽しいね! そんな井上君も日南君も大好きだよ!」


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「え…?」

二人が驚いたようにこっちを見る。

あたし、何か変なこと言ったっけ…?


自分の言葉をもう一度心の中でくり返す。


―二人見てると楽しいね! ―

うん。問題なし。次。


―そんな井上君も日南君も大好きだよ! ―

大丈夫。…じゃない。大丈夫じゃない!
好きって言っちゃってるよあたし! どうしよどうしよ…。


そうやって一人であせっていると今度はあたしが日南君に笑われた。


「本当おもしろいな、北条って」

「っえ…」

笑った顔はとても輝いてた。あたしは思わず見とれてしまう。


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「改めて、これからよろしくな、北条」

手を差し出された。あたしはその手をそっと握り返して言う。

「よ、よろしく…」


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やっぱり、握った手はぽかぽかと温かかった。