放課後。

校門の前で二人と待ち合わせをしていた。

あたしは日南君と話せるのが待ちきれなくて、
待ち合わせの時間より十五分も前に来てしまった。


自然に顔が笑顔になって、自分でもバカな人だな、と思った。


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それにしても遅いな、井上君と日南君。

あたしはすっかり赤く冷えた手をさすり、息を吹きかけていると、
聞きなれた声が聞こえた。


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「北条さん!」

井上君だ。

後ろを振り返ると、日南君がいた。


こんなに近くで見たのは初めてだ。幸せ。

「ごめん、待った?」

「ううん、今来たとこ」

小さな嘘をつく。

井上君は騙せたのに、日南君はそうはいかなかった。


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「嘘だろ。ほら、手がこんなに赤くなってる」

日南君はあたしの手を大きな手で包み込んだ。

「気付かなかった…。さすが涼介。待たせてごめんね?」

「大丈夫。ありがと」

あたしは包み込まれている手も、顔も、熱くなった。

きっとどちらもりんごみたいに赤いだろう。


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「もう温まったかな?」

手が離れる。だけどまだ、熱い。


「うん。温まったよ」

「なんだかオレ取り残されてる…」


あ! 忘れてた! ごめん、井上君。

「帰るぞ」

そう言って日南君は鞄を背中にひっかけて、歩き出した。


…? 日南君、機嫌悪い…? 気のせいかな・・・