桜、見に行かなきゃ良かった…。


あたしは美術室でひとり、後悔していた。


どんどん逢いたくなる。

欲張りになっていく。

想ってしまう。


逢いたくて逢いたくてたまらなくなって、胸がうずく。

ズキズキ痛む。唇をかみしめて、痛みをこらえる。


今さらだけど、メアドを消したことに後悔した。

メアドを変更して、涼介には教えなかったことにも後悔した。

涼介に別れた理由を聞かなかったことにも後悔した。


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後悔ばかりがあとに残る。

もう忘れたはずだったのに。


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あなたはどうしてまた現れるの?

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また、あなたに逢いたくなるじゃない…。

言葉を交わしたくなるじゃない…。


また、愛したくなるじゃない…。


触れて欲しくなるじゃない…。

触れたく、なるじゃない…。


どうしてくれるの…。

どうしてくれるのよ…?

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キィ…。


「!」

扉が開く。

あたしは隠れるように涙を拭う。


「誰…?」

振り向かずにあたしは聞いた。


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「オレなら、泣かせないよ…?」

その声に驚いて、あたしはばっと振り向いた。


「どうしてここに」


「絶対…。心から誓うから」