高校三年生の春。

避けられない受験が近づいて、
みんなが少しずつピリピリし始めているのを肌に感じる。

じめじめした、梅雨のような嫌な時期。


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あたしはもう校門の前で待つこともなくなり、一人で絵を描き、
時には受験勉強をする、というような、平凡な日々を過ごしていた。


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退屈だけど、平和。

平和だけど、退屈。

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どっちが良くてどっちが悪いのか。

はたまた、どちらも良くないのか、悪くないのか。


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考えれば考えるほど、分からなくなった。

てことは、分からなくていいんだ、きっと。


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「ね、美雨、聞いてる?」

「あ、ごめん、聞いてなかった。何?」

「一年生、入ってきた?」

「うん、六人」

美由紀は驚いたように目を見開いた。

「多いじゃん! 二年生、がんばったんだね」

「あたしもがんばったよー!」

「はいはい、えらいえらい」

「もー! 絶対思ってないじゃん!」

「思ってるよ」


美由紀といると落ち着いていられる。

美由紀は友達が多くて忙しそうだけど、
出来る限りあたしのことを最優先にしてくれる。


でもこんなあたしも、
美由紀の友達の友達になることが多くて、友達は意外に多い。