年賀状をお母さんとお父さんの分も買う。というより買わされた。


百枚を軽く超える紙の束を持って、暖房で温かかった郵便局を出る。

一気に冷たい外気があたしを包み込んだ。

針のような冷たさに、少し身震いする。


のろのろ歩きながら帰っていると、

「あ」

「…あ、井上君」

「こんにちは…こんばんは」

井上君のためらったようなあいさつに笑ってしまう。

「何で二個言うの」

「どっちか分かんなくなったから」

おかしくなって、二人で笑いあった。


「年賀状、買ったんだ」

紙の束を指差す。

「うん。お母さんとお父さんの分もあるけどね」

「そうなんだ…手書き派?」

「手書き派」


毎年イラストとかも全部手書きだから、時間がかかる。

そして大体、時間かけすぎでしょ、って怒られる。

「手書きかぁ…楽しみだなぁ」

「楽しみにしててね」

「じゃあまた、来年」

「来年ね」


あたしたちは道端で深いお辞儀をしあった。

道行く人たちに変な目で見られた気がしたけど、まぁいいや。

「バイバイ!」

「バイバーイ!」