高校二年生の冬。

ふわふわと天使の羽根のような雪が舞う。

はく息は白くて、しもやけの手は真っ赤だ。


首を覆い隠すようにカラフルなマフラーを巻いて、
あたしはいつも通り待っている。

大好きな…

「お待たせ」

「涼介!」

最近、あたしも名前呼びになった。

ぱたぱたと駆け寄る。


涼介はふんわり優しく手を繋いでくれる。

「冷た…」

「涼介は、あったかい…」

「心が冷たいんだよ」

「そんなことないよ!」

「あはは、ありがと」

繋いでいない右手で、涼介はあたしの頭をぽんぽんと叩いた。

何気ない仕草だけど、あたしの背の小ささを感じる。


「あたし、もう、背伸びないのかな」

「伸びなくていいよ。それでも十分かわいいから」


「…ッ…」

本当…狂わされる…。


でも、そのあとのいたずらっ子みたいな笑顔に、どうしても負けてしまう。


「もう、クリスマスだね」

「…そうだね」

「どこか、行きたいとこある?」


手を繋ぎながらゆっくりと雪の積もった桜並木を歩く。

道行く人々は微笑ましそうにあたしたちを見てる。

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「…夕日の差し込む電車に乗りたい」


「…え?」


あたし、何言ってんだろ…。恥ずかしさで顔が赤く染まる。


「ごめん、やっぱ」

「いいよ、乗ろう。二人で乗りに行こう」

「涼介…ありがと!」

「どういたしまして」

あたしはいつも涼介に助けられる。

行動にも、言葉にも。


やっぱり、あたしは涼介が心から…

「美雨」

「へ? …!」

唇が触れ合うだけの、瞬きみたいな軽いキス。


それだけでも、あたしの唇は、顔は、心は、カーッと熱くなる。

「好きだよ、美雨」

優しくて甘い、大好きな声。

名前を呼ばれるだけでくすぐったくなる。


「…あたしも」


「じゃあ、明後日の午前九時に、駅前で」

「分かった。楽しみだなぁ」


あたしたちは小さな子供みたいに手を振りながら帰った。