「…色、使ってないんだね」

「そうだよ」

「でも、色が見える」


「それは…嬉しい言葉だ」


井上君は、いつも言ってほしい言葉を言ってくれる。

まるであたしの思ってることが分かるみたいに。


「どうしたの?」

聞きなれた声がした。

「日南君! 絵が完成したの。本当、ありがとう!」

「どういたしまして。…見せてもらっていい?」

「いいよ。はい」


紙を渡す時に少し手が触れて、二人は電気が走ったように身を震わせる。

そしてそのあと、照れながら微笑みあう。


「…ありがと」


「…だよ」

「え?」

「なんでもなーい」


最近井上君が冷たいなぁ…。

かっこいい時もあるのに。


よく分からないや。