あたしは、日南君と学校を出た。

サッカーのユニフォーム姿の男子生徒と、
手が鉛筆で真っ黒に汚れた女子生徒は、傍から見れば、異様だっただろう。


でも日南君は黙ってどんどん歩いていく。

あたしはそれに必死についていった。


「日南君、どこに行くの」

「いいところだよ」

「さっきからそればっかり!」

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「…着いた」

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「え?」

「ほら」


学校に来る道の途中にある桜並木だった。

年齢を重ねた、たくさんの樹木がそびえたっている。

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「!」

花びらだけじゃなくて、葉っぱさえも散ってしまっていたけれど、
あたしには、はっきり花びらが見えた。

堂々と上を向いて咲く花びら、それらがひらひら舞って落ちるところ、
そしてその時にふいた風も見えた。


「ありがとう、日南君!」

あたしはそう言ってさっき来た道を走って引き返した。