課題が終わって薫ちゃんは帰り、あたしは美術室で一人になった。

モノクロの桜の絵にふと目をやる。


あともう少し。

だけどまだ、仕上がらない。

時間が足りないんじゃなくて、表現できない。


風に乗って舞う花びらの儚さを。

花びら一枚一枚の淡く美しい色を。


コンコンと窓が叩かれる。

「!」

窓を軋ませながら開ける。

「日南君!」


「どう? 絵、進んでる?」

進んでません…。


「進んでないんだ?」

そう言って優しく微笑んでくれた。

「うん…」

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「じゃあさ、ちょっと気分転換しに行かない?」

「え、でも日南君、まだ部活の途中じゃ…」

「今はちょうど休憩に入ったとこなんだ」

グラウンドの方を指差す。

そこには、疲れきったのか、たくさんの人が寝転んでいた。

「そうなんだ…。分かった。気分転換ね]