すると、閉まったばかりの扉が再びがちゃりと音を立てて開いた。

「薫ちゃん…」

薫ちゃんは何も言わずに席に着いた。

美術室に沈黙が広がる。

嫌だなぁ、こういう雰囲気…。


そう思っていると、薫ちゃんが口を開いた。


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「先輩には、完敗しました」

「へ?」

「日南先輩のことでも、コンクールに出した絵でも。

…私がどれだけあがいても、日南先輩の気持ちは傾かなかったし、
コンクールの絵、入賞した、って思ったら先輩の絵は大賞」


「薫ちゃん」

「私は、やっぱり先輩にはかなわないな、って実感しました。
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私は、心から北条先輩のことを尊敬しています」


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「…薫ちゃん」

薫ちゃんはくすり、と笑った。


「北条先輩、さっきから私の名前しか言ってませんよ。
でも、全部こめられてる感情が違う…。

私、北条先輩に名前呼ばれるの好きです」

にっこり微笑む。


「薫ちゃん!」

そう言ってあたしは薫ちゃんに抱きついた。

「仲直りです」

「仲直り!」

部活が楽しいものに復活した瞬間だった。

「でも、次のコンクールは絶対大賞とってみせますから」

「負けないよ」

二人で笑いあった。

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きらきらした笑い声が美術室に響く。