「ごめんなさい、待った?」

息を切らしながら、あたしは待ち合わせ場所に着いた

「ぎりぎりセーフ! 北条さん、浴衣じゃん、かわいいね!」

井上君はいつもと変わらずお世辞を飛ばす。

あたしの隣にいる人に気付いたのか、一瞬顔を曇らせる。

「美由紀…久しぶり…」

「…久しぶり」


「…ね、もう全員そろった? それなら行こうよ!」

「そう。そうだね! みんな、もう行くよぉ!」

いつもの井上君に戻ったみたい。

みんなの輪に突っ込んで行って、はしゃいでいた


その後姿が少し悲しそうだったのは、あたしの勘違い…?


「美雨、私たちも行こう」

「あ、うん」

浴衣、歩きにくいなぁ。

「日南いるよ、行ってらっしゃい♪」

「え?」

いきなり美由紀はあたしを日南君のほうへ突き飛ばした。

「え、まっ、あ。え、えと。こんばんは、日南君」

「…ん」

なんだか、機嫌悪い…? どうしたんだろ…。

顔はしかめっ面で、話しかけづらい。


その後も、日南君に話しかけるタイミングを逃したあたしは、
美由紀のところへ戻っていった

「何戻ってきてるの!」

「だって怒ってるんだもん、日南君…」

「そんなことないわよ、楽しい楽しいお祭りなんだから!」

「そうかなぁ…?」

「ほら、美雨がぐずぐずしてる間に
あいつらが日南のところ行っちゃったじゃない!」

美由紀が指差す方向を見ると、薫ちゃんがいた。