「…ってことでね、この子に合う浴衣はない?」

「…それでしたら、こちらはいかがですか?」

わぁ…。

濃い紫の生地に黒色の蝶が飛んでいて、
白や薄い桃色の小さな桜もちりばめられている。

「かわいい…」

「気に入った? それならこれにするわ。
着付けと髪型のセットお願い。急ぎでよろしくね」

「かしこまりました」


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そしてあたしは変身した。


髪もふわふわのおだんごにして、唇には少しリップも塗ってもらった。

帯でお腹もしっかり巻いて細くして、
からんと可愛らしい音を立てる下駄も。

世界がひっくり返ったようだった。

鏡の前で目を丸くさせる。

「あと七分で待ち合わせの時間に遅れちゃう! 急ぐわよ、美雨!」

「わ、分かった!」

下駄をからから鳴らしながら、あたしと美由紀は必死に駆けた。