夏祭り当日。

あたしは後輩三人に待ち合わせ時刻より早く来てもらうことにした。

隣には美由紀がいる。しきりに携帯で時間を確認している。

「どうして来ないのよ! もう五分も遅れてる!」


「! 来たよ! 美由紀!」

向こうから下駄をカラカラ鳴らしながら三人がやってきた。

「先輩、ごめんなさい! 電車に一本、乗り遅れちゃって…。
それで、話ってなんですか?」

いきなり来た! 美由紀のほうをちらりと見る。


何してるの!

早くビシッと言っちゃいなさいよ! っていう目で見てくる。

「えっと…。薫ちゃん、ごめんなさい。
あたしも、日南君のことが好きなの」

「…。…そうなんですか。いいですよ。戦いましょう」

戦う!? そんな勇気ないよ…。

「いいわ、その戦いに絶対に勝ってみせるからね!」

「っえ! 美由紀!」

「これくらいでいいのよ」

いつにも増して強気な微笑み。

「分かりました。私が必ず勝ってみせます。手加減は、しませんから」

そう言って薫ちゃんたち三人はあたしから離れていった。


「よし。美雨、まずはその服装を変えるわよ!」

「え?」

お気に入りのワンピースなのに…。

「お祭りなんだから、浴衣よ浴衣! 行くわよ!」

「どこに?」

「あいつらよりかわいい浴衣が売ってる店よ!
私の顔が利く店があるから!」

さすがお嬢様の美由紀…。

お父さんはどこかの大きな会社の社長さんで、お母さんはお医者様らしい。


でも美由紀はそのことを全然自慢したりしない。