「かっ、彼女じゃないよ…」

「そうなんですか…。

この前、ここの窓のところで話しているのを見たので…」

そんな残念そうに言われても…。

「日南君、すごいよね」

違う話題に変える。

「はい!

日南先輩が一年生の時、サッカー部に先輩はいなかったんですよね?

それなのに、あんなにプレーが上手いだなんて、素晴らしいと思います!

教え方も上手いし優しいし、プレーも本当上手だし…。って…すみません。

話しすぎました。もう朝練に行きますね」

「いいのよ。またいつでも話に来てね。行ってらっしゃい」

西野君は礼儀正しくあたしにお辞儀して出て行った。

かちゃりと音を立てて、美術室はまた校舎から切り離された。

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それにしても…西野君、本当に日南君のこと好きなんだな、って思った。

目がきらきら輝いていて、聞いてるこっちも楽しかった。


日南君もすごいな…。

先輩がいないけど、廃部寸前だったサッカー部を立ち直らせて
後輩にあんなに好かれて…。試合に出るまでになるなんて。


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でも、あたしは知ってるんだよ、日南君が頑張っていたことを。

美術室からいつも見てた。


放課後はみんなが帰るまでは絶対に帰らなくて、
ボールも毎日きちんと磨いて帰っていた。

雨じゃなかったら、放課後練習がなくても走っていた。

汗を流して、息を切らせて、毎日毎日。


それだけ日南君を想っていた。

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「この気持ち、日南君に伝わればいいのに」


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後にこの言葉は現実となる。