井上君とはまだ少し気まずいまま、もう、春が終わろうとしていた。

桜が風に乗って舞っていた。


「綺麗…」

「そうだな」

「日南君!」

「おはよう、北条」

朝から日南君を見れるなんてラッキー!

「おはよう。今日早いね」

「試合近いからさ、朝練があるんだよ」

「頑張ってね」

「おぅ! 北条はいつもこの時間?」

「うん。この時期はね。桜見るの好きなんだぁ」

「そうなんだ」

桜は昔からずっと好き。

咲き乱れているところとか、はらはら舞い降りるところとか、
少し儚げな感じが好き。


「桜とかは描かないの?」

「…ちょうど描いてるの」


言い当てられたことに嬉しくなって、にこっと微笑んだ。

「へぇ…見たいな。いい?」

「また今度ね」

「約束な」


日南君はそう言って指を差し出す。指きりげんまん…懐かしい。


「うん、約束!」