ぷあんと間抜けな音を出しながら、電車が入ってきた。

乗り込むと、むわっと生暖かい空気があたしを包み込む。


中もプラットホーム同様がらがらで、たやすく座ることができた。

案の定、日南君も隣に座る。


日南君は疲れているのか、うとうとしている。

あたしは窓の外を眺めながら、ぼーっとしていた。


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電車の中だけ時間が止まっているかのようで、なんだか不思議。

ずっとこのままだったらいいのになぁ。

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ずっとこのまま、日南君と…

「~駅、~駅」

日南君の降りる駅だ!

「日南君、起きて、日南君!」

「んあ…?」

小さなあくびをしながら起きる日南君。

「もう降りなくちゃいけない駅だよ!」

「え、マジ? サンキュ、北条。また明日」

そう言って降りていく後姿を見ながら、
あたしはまた窓の外を眺めはじめた。


けれど、もう外は暗く、
電車の中の光を反射してあたしの顔しか見えなかった。


まるでこの世界にあたし一人しかいないみたい…。

さっきは日南君もいたのにな。少しの寂寥感を感じた。


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気持ちよくまどろんでいると、あたしの降りる駅に着いた。

プラットホームに降り立っても、変わらず人はいない。


外も時間が止まっているみたいだ。


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「寂しいなぁ」

独り言は独り言。あたしの小さな独り言は薄暗い外気に溶けていった。