教室に戻ろうとしたら、日南君に引き止められた。

「杉原、泣いてた…」

「井上君と、別れたらしいの」


「…どうして」

日南君の手は少し震えていた。

「井上君に、好きな人がいるらしいの」


「!」

日南君は何かに気付いたようなそぶりをした。


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「何か知ってるの?」

自分でも怖いくらい低い声だった。

「知らない。一樹の気持ちなんか、俺は知らない」


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「ごめんなさい。もう聞かない」

「大丈夫。…今日、部活ある?」


あたしに気を使って話題を変えてくれた、


「今日はないよ」

「じゃあ、一緒に帰ろうよ?」


日南君の優しさが。心が。


「うん…。分かった。じゃあ放課後。また」


笑顔が。


「…またね」


あたしの心にじんわり染みこむ。

それはあたしの暗い心に光をともす。


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あたしはあなたが好き。