「じゃあ、もう行くね」

「寂しくなったら帰ってきなさいよ」


お母さんは涙ぐみながら言った。

だけどあたしはきっぱりと宣言する。

「帰らないよ。あたしは絵に専念するの」


「…そうね」


あたしはタラップに足を乗せ、飛行機に乗り込んだ。

癖で、窓の外を眺める。


無機質な雲がゆっくりと空を流れていた。


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『皆様、この飛行機はまもなく離陸いたします。

もう一度、シートベルトのご確認を…』


シートベルトをかちゃかちゃとしめなおす。


もう、お別れか…。


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日本全て。


美由紀にも、一樹にも、学校にも、そして、涼介にも。

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ずっと、さよならは言わないから。


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もう、好きだよって、言わないから。

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いつまでも、あたしはあなたを想っていたい。

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それだけは許してね…?

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『では、離陸いたします…シートベルトをしっかりお締めください…』


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「またね、涼介。

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…ずっと…ずっと、大好きだったよ」