空港に着く。

色々な人が行きかう。


あたしは袖をまくって腕時計を見た。

飛行機が出るまで、あと二十分しかない。


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だけど…三分…三分だけ…待とうかな。…待ちたい。

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何かがあたしをひきとめた。


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「美雨、何してるの!」

あたしの前を歩いていたお母さんが立ちどまり、言った。


「ごめん、お母さん。三分だけ待って」

「でも」

「お願い!」


お母さんはふっと諦めたかのように笑って言った。


「…分かったわ」


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一分が過ぎた。

あたしの前を通り過ぎていく人々は、みんな忙しそうだ。


残り一分…。

人ごみの中に、涼介の姿はない。

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あと三十秒。

あたし、何やってるんだろ…。


来るはずないのに。


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さっき、きっと怒らせたのに。


あたしから別れを告げたのに。

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来るわけ、ないじゃん…。


あたしは今自分がしていることに馬鹿らしくなって、少し笑ってしまった。