家に帰ると、お母さんが荷物を用意して待っていた。

「遅いわね! すぐ家を出るわよ!」


「うん、分かった」


家に入ったのもつかの間、すぐに家を出る。



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この家も、もう見納めか。

綺麗に掃除してから出たかったなぁ。


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今回の留学は、急に決まったものだし、仕方ないか。

自分で選んだんだしね。


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「留学…」

もう一度その言葉をかみしめる。

言うのは軽いけど、その言葉は想像以上に重たくて、あたしにのしかかる。


不安で満ちた、外国での生活。


たった一人で。


辛いこともあるだろうし、悲しいことももちろんある。


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きっと。

だけど、乗り越えよう。


強くなろう。

後悔のない人生を送ろう。


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「車、乗って」

「うん」

がちゃりとドアを開け、乗り込む。

全てとお別れ。


エンジンをふかす音がし、車が動き出した。


「待って、お母さん!」


「何?」


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「行きたいところがあるの」