「あ、えと…僕は祐樹ではありません」

え…? どういうこと…じゃあなんであたしのことを…。

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「祐樹は、僕の兄です」

「え…?」

祐樹君の、弟さん…?


「少し、お話しませんか」

あたしは弟さんに席を勧められ、少しの間だけ話をすることになった。

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「そうだったんですか…」


祐樹君はやっぱり、病気であの時に亡くなったらしい。


けれど、毎日その日にあったことを弟のあの店員さんに伝えていたそうだ。


ずっと桜や空の話ばかりだったのに、
途中からあたしのことばかりになった。


だから弟さんもあたしの名前を覚えていたらしい。


あたしのことを語る祐樹君は本当に幸せそうだった、って。


心から嬉しそうな笑顔だったって。あたしもそうだったよ、祐樹君。


祐樹君と過ごした日々は、とてもとても幸せだった。

楽しかった。


モノクロだったあたしの日々に、色をつけてくれた。


おかげであたしは今、絵を描き続けていられるんだよ。


ずっと、見ててね。

あたしも祐樹君みたいに、
頑張ってあたしの絵で人を幸せにしてみせるから。


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約束だよ。