大学一年生の秋。


紅く、黄色く、時には茶色く染まった葉っぱが辺りを覆う。

寂しい秋。


だけどあたしはその感じが大好き。


秋の空も好き。


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夏とはまた少し違った青い色。


手を伸ばして触れたくなるような綺麗な色。


絵の具では到底作り出せない、不思議な色。

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その空の下で、あたしは少し古風なお店の並ぶ小道を歩いていた。


カラン、とドアベルを鳴らし、あたしは店へと入った。


ひんやりと冷えた空気があたしを大きく包み込む。

店には青く錆びたランタンがひとつ吊るされているだけで、
黄昏の時のように薄暗い。

店全体が不思議な雰囲気を漂わせていた。


「あ…」

桜の彫られたメダル。

アンティーク調で、金が錆びたような感じの、どこか懐かしいメダル。


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「それ、気に入られました?」

後ろからいきなり声を掛けられた。

びっくりしてメダルを落としそうになる。


だけど店員さんはそんなあたしに気付かずに話し出す。


「桜は僕たちにいつも違う顔を見せてくれるんですよ。
空もそう。

人間だってそうなんですよ。だから僕は…」

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「祐樹君?」

店員さんはあたしが突然振り返ったものだから、とても驚いていた。


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「え…。…美雨…ちゃん…?」

「祐樹、君…?」