「なに見てるの」
「黒猫さんを見てるの。」
「いや、分かるよ」
お、突っ込んだ。
回復の兆しが見えてきた。
いつもよりふわふわな、寝起きの髪の毛。
重く垂れた、病人の目。
ぶらぶらさせている、真っ白な脚。
「うわぁ、からすがガン見してくる」
「ガン見してるもん」
「あっち見てよ、何か気まずい」
「いいよ、気にしないで食べて」
「食べにくいから言ってるんだよー・・・」
眉を寄せ、困ったように視線を逸らした黒猫さんに満足。
あぁ、新鮮で面白い。
「ごめんごめん」
「ねぇ、カラスもいる?」
「は?」
「おかゆ。美味しいよ」
「美味しいも何も、俺いらない。」
「えー食おうぜー」
「何で?!」
からからと笑う黒猫さんは、到底熱がありそうに見えない。
でも重度の病人だ。
「ありがとう、でももう作ってる時食べたから」
「嘘だ。」
「本当。」
「何だよー・・・子供あやす様な嘘ついてさぁ」
(だって今の黒猫さん子供みたいだよ・・)
「そう?ごめん」
「もういいよ。食べちゃったし。」
「早いね、意外と」
空になったお皿を受け取った。

