「本当だ、勿体無い。ビルが邪魔だね」

「そうなんだよ。あのキャバクラとか特に邪魔じゃない?」

「黒猫さんもキャバクラで働いてるじゃん」

「あ、そっか」




空が綺麗。


なのに、道を歩く人はその空を見ようとしないで、下を向いているか、真っ直ぐ進んでいるかのどっちかだ。



「恥ずかしくないのかしらねー」



後ろから女性の声が聞こえる。


けど、気にせずに俺は空を見続けた。




「カラス君、通学途中に空を見てはいけない法律なんて無いよね」

「うん、無いよ」



恥ずかしく、ない。



昔の俺だったらこんなこと出来なかっただろうけど、今は全然恥ずかしくなんて無い。



周りの人に合わせて、自分を殺すのはもうやめた。
“自分”は“自分”でしかない。



他の人に流されるなんて、勿体無い。




「折角の空が建物で狭いよー」

「うん。そうだね。・・・・・・あ、そうだ、今日屋上で昼ご飯食べない?」


黒猫さんと俺は顔を元の位置に戻した。



「それ、いい考え」

「でしょ」