“黒猫”さんは本当に謎が多い人で、掴み所が無い。


捕まえておかなければするりと何処かへ逃げて行ってしまうし、気まぐれだし。



突然甘えてきたと思ったら、今度は目の前に居なくて。




「俺が変わったのはね、多分黒猫さんのおかげだよ」

「わたし?」

「今まで、ずっと飽きてた“日常”を黒猫さんがぶち壊してくれたんだ」

「・・・・・・・・いいの?それ・・・・」

「お陰で高見さんや、雅や、マユさんや、お兄さんにも会えた。きっとこんな貴重な時間、今までの俺だったら経験できなかったと思うんだ」



黒猫さんの頬に触れた。



(あ、頬は温かいんだ)




「だいすきだよ」


(あ、もっと熱くなった)


指を伝わってくる熱に、思わず笑いが零れてしまった。




「照れてる」

「・・・・・・今日は意地悪だねカラス君・・・」

「黒猫さんには負けちゃうよ」



俯いている黒猫さんの顎を掴んで、キスをした。



黒猫さんが先程食べていたチョコレートの甘い味が口内を擽る。



あぁ、甘い。