薄々心の中で思ってた。


黒猫さんのお兄さんとは話がしたいなって。





俺だって黒猫さんの事好きだし、傷付けられたり悲しませたりするのは許せない。


でもきっと、そんな許せないお兄さんでも俺は責められないと思う。




中学生の頃から黒猫さんが我慢してた理由に、何かあるのだろうか。


ずっと、誰にも溢さないで耐えてた黒猫さんには、何か自分なりの理由があるんじゃないか。




(・・・・・・だとしても、何か一言言って欲しい)


ついこの間までは普通に笑っていたのに。





そう考えながら、あっという間に薄暗いマンションの前に俺は立っていた。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


微妙な決心をして、その階段を上る。


(どうか、寝坊でありますように)


何回そんな事思ってるんだろう、と自嘲した。
確か以前も寝坊を望んでたっけ。




「・・・・・・・君が、“カラス君”?」



ひやり、突然掛けられた声に驚いて、心臓が跳ねた。