「あれ、どうしたの」
イヤホンを片方外して、黒猫さんと向き合った。
「カラス君て、帰るときいつもつまらなさそうな顔してるよね」
ポケットに手を突っ込んでる黒猫さんが、そう言う。
「私に見せてくれる“カラス君”と他の人に見せてる“カラス君”は何か違うね」
「そんなにつまらなさそうな顔してた?」
「うん。今日の昼はあんなに笑ってたのに」
黒猫さんが笑う。
「・・・・・・・そうなのかなぁ」
自分はこの一人だけの空間、好きだったけれど。
確かに、この空間より黒猫さんと会話する時間の方が楽しいっちゃ楽しいもの事実。
「私、初めに言ったよね。何か失礼な事」
「あぁ、“わざとらしい笑い方するんだね”?」
「そうそう。それ、直感で口走っちゃって。あの時ごめんね」
「いいよ、別に。それに、黒猫さんの言ってる事大体正しいし」
黒猫さんが視線を自分の爪先に落とす。
「・・・・何か、カラス君は作った笑いかたが定着してる人なんだな・・・って思ってて。あの時つい口走ってた」
「黒猫さんらしいね」
「そうなの?」

