少し間が開きコール音がして、数回、いやかなり待った所でその人は電話に出た。


『須王?』

「あぁ、うん。父さん。」

『お前が電話をくれるなんて珍しいな』

「電話代半端無いからね」



電話越しに穏やかな声で笑い声が聞こえる。



「電話、結構前にしてくれたみたいだったけど、何かあった?」

『そう言えばそうだ。掛けたな。お前に。』

「忘れる所が父さんらしいよ」



電話の相手を想像して、こっちも何だか笑えてきた。



『いやぁあのな。また仕事が移転して。まあそのお陰で会社の景気は絶好調なんだけど、今度はアメリカに分社をつくるそうだ。それで、俺の課が行けって・・・。』

「カナダの次はアメリカかぁ。良かったじゃん、温かいの好きでしょ父さん」

『カナダは寒くて仕方無いぞ。まぁ俺も正直喜んでいるは喜んでいるが・・・』



ぎしり、凭れたソファが鳴いた。



(父さんの気持ちは痛いほど分かるよ)


昔っから心配性だから。




「俺の事は気にしないで。楽しんでいるんでしょ?仕事。父さんの実力は日本には勿体無さ過ぎる」

『お前田舎の婆ちゃんみたいな事言うな。俺はそう言うのが心配なんだ。』

「・・・・・・・・何それ。」



少し、お互い苦笑しながら沈黙が流れた。




『母さんが生きてればお前ももっと男らしくなったのかなと時々思う』

「・・・・・・・・・・・」