【短編】通り雨




「あ、いらっしゃーい。コーヒー飲む?」

「……うん」


なんだかソワソワしてしまう自分が恥ずかしい。

こーゆーときってどうしたらいいの?

一つのことに集中する…とか?


あたしは、そう思ってコーヒーを淹れる男を見つめた。

あたしより頭一つ分高い伸長。

てことは…175は軽く超すよね。

ふわふわと柔らかそうな栗色の髪。

…あれは染めてる。根元が黒いもん。

顔は……よく見てないや。


あたしに背を向けるようにして立っているから、顔はよく見えない。

おねーさん、っていうくらいだから若いのかな。

でも絶対女に困ることないんだろうな。


足元に転がる真っ赤なネイルとか。
化粧ブラシとか。

……もう少し片付けたらいいのに。


きゅっと締め付けられる胸が苦しい。

……苦しい?

は?あたし、女がいるとしか思えないこの男に対して胸が苦しいの?


……バカか。あたしは。