【短編】通り雨




「……おねーさん俺んちくる?」

「男不信って言ったよね?」

「そーゆー意味じゃないし。あ、そっちがその気なら俺は全然いいけど?」

「お断りします」

「でもそのカッコじゃ電車もバスも乗れないっしょ?」


確かに言われてみれば、こんなびしょ濡れで乗ろうとしたら止められるに決まってる。

かと言って歩いて帰れる距離ではなくて。


「それは……そうだけど」

「でしょ?つーことでほら、立って」


グイッと腕を引っ張られて無理矢理立たされた。

長時間固いところで寝ていたからか、身体中が痛い。

それを気にせずぐんぐん歩く男に声をかける。


「……もう少しゆっくり歩けない?」

「え、もっと俺といたいって?」

「ばーか」


ペチッと肩を叩いて、歩き始めた。