【短編】通り雨




「お願い……」

うるっとした瞳であたしを見る隼人。

ズルイから……

「……っ」


あと少しで流されそうになった時。

あたしの顔の横に転がる真っ赤なネイルが目に入った。


そうだよ。隼人は他にもこんな風にする女がいる。


騙されちゃいけない……


「彼女いるんでしょ。それにあたしは男不信だって言った」

「彼女とかいねーし」

「じゃあ何?コレ」


手を伸ばして赤いものを隼人に見せる。


「それは……っ」

「……ね?これだから嫌なの。すぐ理性飛ばしちゃうんだから」


ツンッとそっぽを向いて隼人が降りるのを待った。

何でこんなのに一目惚れしちゃったんだろ。


…あたしもバカ。かなりのバカ。

でも、あたしの上から避けようとしない隼人が愛しい。


…離れないで。他の女なんて見ないで。


何でこんな短時間で好きになっちゃってるんだろ…