【短編】通り雨




「はい。インスタントだけど」

コトン、とおかれたかわいいマグカップから柔らかい湯気が登る。

……苦しい。

女物のマグカップ見ただけで苦しい。

「ありがとう」

でも、この苦しみに気付かないフリをしてコーヒーに口を付けた。


「……甘…」

「え?甘いの無理だった?」

「…ブラックの方が好き。でもまぁ平気…かな」


想像以上に甘いコーヒーを少しずつ飲む。

穏やかなコーヒーの香りが部屋を包む。


「…ねぇ、名前と年は?」

「あ、俺に興味湧いてきた?」


にっと笑ってあたしをからかう男を睨む。


「名前は隼人。年は21」

「………は?21?」

「うん。何で?」

「いや…おねーさん、とか言うから高校生かと…」

「ハハッ!じゃあおねーさんは?」


無邪気に笑う隼人に胸が締め付けられる。

もう…何コレ。

完全に恋じゃん……

電話ボックスで出会う、なんていつの時代よ……