街に出るたび、不思議に思う。

人だけでなく、建物も、どんどん減っていっているような。

消した覚えがないのに、空き地になっている場所がある。


……気のせい、かな。


消したことを覚えていないだけかな。

最近、なんか手当たり次第になっているし、忘れちゃったのかも。


まあ、いいか。


家に帰って、ドラマを見よう。

この町に来てから、テレビを見る時間が増えた。

今まで認めたくなかったけど、現実逃避をしたかったからだと思う。

今、わたしの現実は、逃げるものでも避けるものでもなく、誰からも羨望されるものになったけど。

テレビを見る時間に、さほど変化はなかった。

家に着いて、リビングに行き、リモコンでテレビの電源を入れて。

……、

あれ?

テレビがつかない。何度リモコンのスイッチを押してもつかない。

テレビの主電源を入れてみる。やっぱりつかない。

故障?

何でこんなときに。ドラマは一回でも見損ねると、続きが見れなくなるのに。

こんな不良品を売りつけた電気屋を、店ごと消してやろうかな?

まあ、修理してもらわないと困るから、今回のところは見逃してあげよう。

わたしは母親にテレビの故障を伝え、二階の自分の部屋に戻った。

「まだ買って一年しか経ってないのに、なんなのよこれ!」

またヒステリーが始まった。無視無視。

しばらくして、母親は電話をかけた。修理の依頼をするみたい。

と思ったら、すぐにまた、金切り声が響き渡った。

「なによ、電話も壊れてるじゃない。ああ、もう!」

電話が壊れた?

どうやら、電話が繋がらないらしい。今日は厄日?

「ママー、お水が出ないよー?」

今度は弟の呑気な声。続いて母親の悲鳴だか怒号だかの叫び。

さすがに気になって、下に降りてみる。

二人はキッチンにいた。

蛇口から水をだそうと、これでもか、これでもか、と捻り回しているけれど、水は全然でてこない。

キッチンだけじゃなかった。お風呂場の蛇口からも、水が出ない。

……どうなっているの、これ。