街は、歩いているだけで、気に障る物、人に出くわす。

あのオバサン、化粧派手すぎ。ごしごしごし。

あの外国人、顔が怖すぎ。ごしごしごし。

あのランニングしてるおじさん、がんばりすぎ。ごしごしごし。

あのホームレス、存在価値なし。ごしごしごし。


ごしごしごし。ごしごしごし。

ごしごしごし。ごしごしごし。


カチカチカチ。

「除消、あのコンビニの前であぐら掻いている連中、あれ全部消しちゃって」

カチカチカチ。

「オマエ最近、人間バッカリ消サセルナ」

男たちを消した後、こっちを見ずに除消が言った。

「何か問題?」

カチカチカチ。

ケータイをいじりながら、わたしも除消のほうを見ずに聞く。

「人間とか、生物を消すっていうのは、物を消すよりも咎が深いんだぜ」

「ふーん」

カチカチカチ。

最近、有害サイトのブロックという口実で、未成年のアクセス制限が厳しくなっている。今まで使っていたケータイ小説のサイトに入れなくなった。

……アクセス制限をなくすには、誰を消せばいいんだろ?

「マ、俺の咎は確実ニ送ラレソウダカラ、別ニイインダケドヨ」

わたしはケータイの画面を睨みつけていて、除消の話はよく聞いていなかった。

たぶん、はしゃぎ回ってるんだろうな。わたしのおかげで、天文学的な額の借金をチャラに出来そうなんだし。

そう思ったから。そう思っていたから。

除消の表情に、禍々しい負のオーラが滲み出ていたことに、わたしは気づかなかった。