除消との同盟が結ばれた後、わたしは学校には行かず、別の場所へ向かった。

力を得たら、人は、それを使いたくなるもの。

わたしは今、一つの格言を、身を持って実証した。

試したい。除消の神力を。わたしの、特別な力を。

そこで、物も人も溢れる場所、駅前の繁華街へ向かった。

繁華街といっても、ここは、この町にとっては華やかというだけで。

ここはとっても、寂れていて。

映画館があって。オープン・カフェがあって。百貨店があって。

でも、人の数は少なくて。

郊外に、大きなショッピング・モールが次々とできて、町の中心部の方は、どんどん活気が無くなっていると、ローカルニュースで聞いたことがある。

わたしは、引っ越してきてから、街に出たことは数えるほどしかなかった。

……、一緒に行く友達が、いなかったから。

いくら人が少ないとはいえ、こんな所を一人で、ふらふらする気にはなれなかった。

カラオケに行きたくても、ショッピングしたくても。

わたしは、街に出なかった。

ブランド物の服を売っている大きなお店の前に来た。ここは、そこそこ人がいるみたい。

店内を覗くと、女の子同士で、なにか馬鹿笑いしながら、服を何着も試着室へ持って行っていて。

カップルが、不必要にベタベタしながら、あれでもない、これでもないと、服を取ったり戻したりしていて。

わたしに無いモノを持っている人たちがそこにいて。わたしに無いモノがそこには溢れていて。

そこに広がっている景色は、わたしにとって、とても、不快で。

もし、こんなお店が消えてなくなってしまえば。

わたしは、こんな光景を見なくてすむ。流行に乗り遅れる自分を恥ずかしく思うことがなくなる。

消えて、なくなって、しまえば。消えて、なくなって、しまえば。

……でも。

わたしは一人、お店の前で立ちすくんでいた。