チャイムの合図で、教室の生徒たちは思い思いの場所に散らばっていった。 今日はホームルームだけだから、後はもう帰るだけ。 水瀬さんのもとに行こうと、私も席を立った。 そんな時だった―――。 「……凛」 よく知っている声だった。 教室の空気が止まったかのように、その声に吸い込まれるように、皆がその声の方へと視線を移した。 「か、和弥先輩!?」 「キャー!本物!!」 突然の和弥の登場に、教室中が色めき立つ。 固まる私に、和弥が少しだけ笑って、ゆっくりと私の隣まで歩いてきた。