「そ、条件つき。“お互い二十歳になるまでに、好きな人がいなければ”って」
「え…」
「馬鹿馬鹿しいだろ?今時、婚約者って。俺も最初はなんだそれって思ったけどさ、別に好きな奴もいなかったし、恋愛とかよく分かんねぇし」
「………」
「ま、別にそれでいいやって思ってた」
そこまで言って、和弥は自傷気味に笑った。
親同士が決めた婚約者―――
確かに今時、そんなの珍しいと思う。
だけど、恋愛とか男とか興味もなかったあの頃の私なら、それも一つの選択肢だったかもしれない。
「…でも俺は」
「………」
「凛に出会った」


