特に合図なんてなかった―――。 ドカッ 「っく…」 ガンッ 「ぅ……っ」 夏帆――― 流石に強いわ。お互い引退した身だけど、夏帆の一発はやはり重い。 喧嘩の修行みたいな形の殴り合いはあったけど、本気の殴り合いは初めてだった。 「凛の……けっこう効くわ…」 「お互い様だろうが」 「私が勝ったら……凛。行かせないからね」 私は殴られた頬を押さえて、少しだけ口角を上げた。 「上等!」