―――午後9時。 いつもの時間になって、私は腰掛けていたベッドからゆっくりと立ち上がった。 自分の部屋を出て、階段を下りると、リビングにいるお母さんが見えた。 お母さんと目が合うことはなかったけど、きっと気付いてると思う。 玄関の前に立つと、ふーっと息を整える。 この時間に家を出ていくのはいつものことなのに、妙に緊張する。 それは、このドアの向こうになにが待っているのか分かっているから。 私はしっかりと前を見据えて、玄関のドアを開いた。