「村上…?」
「私なら、大丈夫。ごめんね、変なとこ見せて」
「村上が謝るなって」
「でも…」
「でもじゃない。ほら、大丈夫なら帰ろう?」
生嶋って、どれだけ優しいやつなんだろう。
なんで私、和弥なんて好きになったんだろう。
生嶋に惹かれていれば、こんなに悩んだりしなくて良かったのかな。
―――なんて、こんな都合のいいことばかり考えて、どんだけ余裕ないんだよ。
「ちゃんと休めよ」
「ありがと」
「…あー…それと……」
「心配しなくても、ちゃんと学校行くって」
私がニッと笑うと、生嶋も薄く笑みをもらした。
「おやすみ」と笑って、生嶋は帰って行った。
私はそんな生嶋の背中が見えなくなるまで、玄関先に立ち尽くした。
ゆっくりと家に入って、自分の部屋を目指す。
浴衣の着付けなんて一人でできないけど、脱ぐのは簡単だった。
「……ぅ…っ」
止めようとすればするほど、涙は止まらなくて。
どれだけ泣いたのか……。
私はいつの間にか眠りについていた。