今度こそ、私は歩き出した。


また名前を呼ばれたような気がしたけど、そんなの気にしてる余裕なんて今の私には全くなかった。


これ以上、あの場所にいると確実に泣いてしまうと思ったから。




「…どっか、寄る?」


「………。え?」


「歩きすぎて疲れたろ?」


「あ……」




不意に話しかけられて、二人とも足を止める。


顔を上げると、すごく優しい顔をした生嶋がいた。




「ごめん、私……」




最低だ。私、自分のことでいっぱいいっぱいになって、生嶋のこと全く考えてなかった。