ここにいたくないのに、逃げ出したいのに、足がすくんで一歩も動くことができない。 そんな私の心情を察してか、生嶋が私の手を掴んだ。 「帰ろう…村上」 「…いくしま」 生嶋に促されて、ようやく一歩足が動く。 でも、二歩目は踏み出すことができなかった。 生嶋が掴んでいない方の手を、いきなり掴まれたから。 顔を見なくても、誰が掴んだのか理解できた。 生嶋も私が動かないことに気づいたのか、私の方を振り返る。 私もゆっくりと振り返って、手を掴んでいる本人の顔を見た。