もしも夏帆と行くのであれば、今夏帆が私の家にいるはず。
でも夏帆は聖剛さんと祭に行くんだから、ここにはいない。
一緒に行く相手が和弥ではないことくらい、お母さんだって分かってるはず。
私が和弥の話題を一切口にしないようにしていたから。
それに気づいているのに、何も聞いてこないのはお母さんの優しさかな。
現に和弥のこと考えないで済んでるんだし。
履きなれない下駄でなんとか歩いて、生嶋との待ち合わせた場所に到着する。
あ、いた―――
「いーくしまっ!」
甚平姿の生嶋の背後に近づき、思いっきり背中を押した。


