"コインロッカーに乳児"のタイトル。

「この乳児が結城智恵さんです。この年大阪万博があって、コインロッカーの需要が高まり沢山作られたと母に聞きました。でもこのようなケースも発生し、母は嘆いていました」


施設長はそう言いながら、当時の彼女の写真付きの資料を出してきた。
親を探し出す為なのか、手や足などの特徴が細々と書かれていた。


「美紀似てる……。やはり美紀は母親似なんだな」
正樹がしみじみと呟く。


――そうだよな……
だから俺は美紀に智恵を見ていたのか?

何だか解らないけど、何となく正樹は納得した。




「ところで、彼女の親見つかったんですか? あっそうか。見つかっていたら此処には」

「そう、此処にはいなかったかも」

正樹は資料のコピーを受け取りながら、結城智恵を思いながら深々と頭を下げた。