「えーっと、結城智恵さん…… あ、あったわ。こちらの方ですか?」

施設長が差し出したアルバム。そこには中学生の彼女がいた。

「私の母が名付け親なんです。出身地が茨城の結城でしたから。実は母は此処へ移る前は乳児院に勤めていました。そこで結城智恵さんと出会ったようです」




「彼女はいつも、『本当の出身地はコインロッカー』って言ってて。詳しい話を伺いたくて来ました」

「ああそれなら」

施設長は暫く席を外し、結城智恵の資料とアルバムを持って来た。


その中に挟んであった古い新聞記事を正樹に差し出した。
それは正樹の産まれた年・昭和四十五年の物だった。