トリプルトラブル【完】

 此処は長尾家の三畳ほどの台所。
流しの横のスペースにある調理台には玉子の殻とバックが置いてある。


「みんなー! ご飯が出来たわよー!」

美紀がオムレツをキッチンカウンターに並べながら、兄弟達を呼んでいた。


何時ものような一日が始まろうとしていた。
でもそれは少しだけ早かった。

高校で野球部に所属している兄弟のためだった。

朝練が今日から三十分早く始まるからだった。


『明日から早く起こせよ』
一番上の兄・秀樹(ひでき)に言われた。


『お願いだ美紀。俺達は甲子園出場に賭けているんだから』
二番目の兄・直樹(なおき)に言われた。

兄弟は美樹を入れて三人だった。
でも普通の兄弟ではなかった。
同じ日に産まれた三つ子だったのだ。


でも本当は違っていた。
確かに他の二人は一卵性双生児だった。
でも美紀は、正樹の同級生の子供だったのだ。

美紀はその事実を知っていた。
だから尚更嬉しいのだ。
家族としていられることが……