トリプルトラブル【完】

 秀樹はもう一度直樹を見つめた。

直樹が構えるキャッチャーミット。

何も考えず投げられたらどんなに楽か……

秀樹は再び無心になろうと目を瞑り、セットポジションをとった。


(――この目を開けた時、きっと新しい自分に……)

それは秀樹が又一つ大人になった瞬間だった。




『カーブは教えてもいいが……2シームを有効に使った方が得策だ』
その時秀樹は、前任コーチの言葉を思い出した。


秀樹はストレートの握りを変える事なく、勝負球になりうる2シームを新コーチに教えて貰うことにした。


勿論全ての球質の練習はしていた。
でももっと上を目指すために、新コーチに付いていこうと思ったのだった。

でも秀樹は苦笑していた。
無心になりたくて目を瞑ろうとしているのに、余計なことばかり考えてしまう自分の愚かさに気付いて。