トリプルトラブル【完】

 美紀の解説は解り易い。
その上次々とエースを決めるから、新入部員は憧れの眼差しを送っていた。


クローズスタンス……
ラケットを左腰で押し出すように地面と平行に振りながら膝を伸ばし、右足前方でインパクトする。
重心はバックスイングで軸足にかかり、右足に移動してフォロースルーで右足にかける。
左手でバランスをとることでよりスムーズになる。


アンダーストローク・トップストローク・ロビング・ハーフロビング・シュートと続き、最後にネットに寄ってボレーとなる。


美紀は珠希の指導振りを小さい時から見ていた。
だから的確に教えられるのだった。




美紀はソフトテニス部のエースだった。
でもそれは珠希から受け継いだものではない。
全て努力の賜物だった。


珠希が実母でないと知った時。
余りのショックに立ち上がれなかった。

でも家族が居たから克服出来たのだ。

美紀が一生懸命家族の世話をやくのは優しさへの恩返しだったのだ。


でも……
心の片隅では……