この前の生徒会で、携帯の学校持ち込みが禁止となった。
美紀の兄が生徒会長をしている手前、従うしかないと思っていたのだ。




(――あらっ、何時の間に!?)

ふと……
白い矢車草に目がいく。


「ありがとう。今年も咲いてくれたんだね」

美紀は懐かしそうに、その花を見つめた。

時間が余り無いのは解ってる。
でも美紀はそうしていたかったのだ。


何故なら、矢車草には美紀の育ての母・珠希(たまき)との思い出があったから……。


初めて貰ったお小遣いで、美紀は花の種を買おうと思った。

兄弟がスナックを買うのを横目で見ながら……。


(――美味しそうだな)
確かにそう思う。


(――でもこれなら……)

店頭に沢山並んでいた花の種を見ながら、美紀の目は遠い未来を見つめていた。
そう……
目の前にある種が花開く数カ月先を。