それが精一杯なんだと、美紀には解った。


美紀はやっと冷静になり、部屋を後にした。




正樹は悩んでいた。
美紀を愛していることは解っていた。
それは、美紀の中に珠希を感じたことから始まった。


美紀そのものが珠希だ。
そう感じて怖くなった。
美紀を愛しているのか?
それとも珠希なのか?
正樹は解らずに、悶々としていた。




「お母さん、そんなにパパのことが好きだったの?」
美紀は自分の心の中に問い掛けた。

美紀は自分自身の起こしたはしたない行為を、産みの母のせいにしようとしていた。

育ての母が愛する旦那を求めている。
そう思い込もうとした。

でも誰よりも自分が一番望んだことだと本当は理解していた。